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030 壬生忠岑 有り明けの

壬生忠岑壬生忠岑
みぶのただみね

有り明けの つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし
ありあけの つれなくみえし わかれより あかつきばかり うきものはなし

意訳
有明の月がつれなく見えていたあの別れの朝から、わたしには夜明けほどつらいものはありません。
歌の種類
恋 『古今和歌集 恋歌三625』
決まり字
ありあけの つれなくみえし わかれより
あかつきばかり うきものはなし
語呂合わせ
 ありゃ、赤(ありゃ あか)

人物

壬生忠岑(860年?-920年?)
息子に壬生忠見
三十六歌仙の一人。
下級官吏。

ちゃっかりと

『大和物語』にこんなエピソードがあります。

 忠岑が、右大将藤原定国の随人をしていた頃のお話です。
ある日、夜更けに藤原定国が、よそで酒を飲みいい気分になりました。
定国が突然、左大臣藤原時平のところに行こう、と言い出します。
・・・酔っ払いの言いそうなことです。
しかし、相手は藤原時平です。
あの菅原道真を陥れた時平です。

夜中に、いきなりやってきた定国に驚きながら
「ど・こ・へ、おいでになったお帰りですか」
といいます。
どうせ、酔っ払いの思いつきで押しかけて来たのだろう、という嫌味が「どこへ」に練りこまれています。
怖いですね。ばればれですね。

とっさに忠岑がたいまつを持ったまま進み出て、時平が立っている階段の下に跪いて答えます。

かささぎの 渡せる橋の 霜の上を 夜半にふみわけ ことさらにこそ
(御殿の階段に置いた霜の上を、この夜中に踏み分け、わざわざ、参上したのでございます。
 よそへいったついでに、思いつきで寄ったわけでは決してございません。)

大伴家持の「かささぎの渡せる橋の」を踏まえて、寒さと夜更けを強調しています。
こんな霜の降りる寒い夜更けにわざわざ時平様にお会いしたくて尋ねて参りましたよ、と。

時平はこの歌に非常に喜んで、定国一行を大いに持て成し、定国と忠岑にまでお土産を持たせてくれました、とさ。

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