百人一首で2度出てくることば「みをつくし」とは何でしょうか
わびぬれば 今はた同じ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ (20番 元良親王)
難波江の 芦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき (88番 皇嘉門院別当)
「みを」は 澪(みお)
舟が航行するための水路 という意味です
「くし」は 串(くし)
細長い棒
「つ」は 場所をさす名詞の後につく格助詞です
~~の という意味です
つまり みをつくし は 航路の串
航路にある串は、現在の警戒標識の役目をはたしていました
暗礁・浅瀬・露岩などの場所に立てて船に危険を知らせるためものでした
淀川は各地から集められた税や物資を大阪湾から京都まで運ぶ大切な水路でした
しかし淀川の河口辺りはたいへん広く浅瀬が多かったために、運航が困難だったのです
そこで安全に運航するためには みをつくしが絶対に必要だったのです
みをつくし と聞いて 身を尽くし と連想すること
万葉集の時代から人々はこの「みをつくし」を「身を尽くし」とかけて、趣深いことばとして詠いました
身を尽くし=わたし自身のすべてを尽くしてあなたを大切に思います
このことばは、恋の歌にさかんに用いられました
同時にみをつくしのある淀川河口の難波(なにわ)も同様に趣深いことばとして愛されました
みおつくしは 古くから水の都と呼ばれた現在の大阪市の市章として採用されています
元良親王(百人一首 20番)
あなたとの噂で思い悩む日々が続いている
この恋がみんなにばれてしまったのなら もう同じこと
たとえこの恋のために、わたし自身が滅んでしまったとしてもあなたに会いに行こうと思うのですよ
皇嘉門院別当(百人一首 88番)
難波江に生える芦
その節と節の間ほどの短い時間を、あなたと過ごしたあの一夜のために
わたしは身を滅ぼすほど あなたに恋こがれ続けることになるのね?
澪標(みおつくし)住吉神社
大阪でみをつくしを見るために 此花区伝法にある澪標(みおつくし)住吉神社を訪れました
延暦23年(804年)遣唐使の航路安全を祈願して祭壇を造り、一行の帰路を迎えるため澪標を立てたのがはじまりということです
先ほども書きましたが淀川は土砂堆積によって島洲が数多くありました
それらは難波八十島と称されており、すばらしい景観だったため、この地に安全祈願の祭壇が作られました
祭壇にはみおつくしが建てられたということです
現在でも神社への入口と境内にみおつくしが立っており、本堂の軒にはみおつくしが描かれた提灯がたくさん掛かっていました
この神社のある伝法は江戸時代 大坂から江戸、東北、北海道への定期船の搬送で活躍した場所です
また水質が良く酒造の本場も盛んに行われておりました
定期船は、伝法産以外にも西宮、灘の酒の入った酒樽を運ぶことが多かったため樽廻船と呼ばれました
澪標住吉神社境内に菰(こも)でくるまれ酒樽が多く奉納されていました
船で荷運びをする人足たちが力自慢を競った力石がありました
「神勢力」を刻まれた石で150kgもあるそうです
澪標住吉神社は航海の守護神であり、水の都大阪の歴史を担ってきた神社という印象でした
一度お尋ねになられてはいかがでしょうか
澪標住吉神社を歩いてみた動画です