皇嘉門院別当
こうかもんいんのべっとう
難波江の 芦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき
なにわえの あしのかりねの ひとよゆえ みをつくしてや こいわたるべき
意訳 |
難波江に生える芦。その節と節の間ほどの短い時間を、あなたと過ごしたあの一夜のために、身を滅ぼすほど、恋こがれ続けることになるのね? |
歌の種類 |
恋 『千載集 恋歌三807』 |
決まり字 |
なにわえの あしのかりねの ひとよゆえ みをつくしてや こいわたるべき |
語呂合わせ |
難波江の澪標やぁ(なにわえの みおつくしやぁ) |
人物
皇嘉門院別当(生没年未詳 1181年12月存命)
崇徳院中宮皇嘉門院聖子(法性寺入道前関白太政大臣の娘)に仕える。
聖子の異母弟、九条兼実の歌合に参加。
船の標識、”澪標”の意味は?
毎日新聞社「昭和史 第1巻」より
摂政右大臣の時の家歌合に、旅宿に逢ふ恋といへる心をよめる
『千載集詞書』より
(摂政の九条兼実が右大臣の頃の兼実家歌合で、歌題「旅の宿りで逢う恋」という気持ちを詠みました。)
九条兼実が右大臣だったのは、1166年から1189年までのことです。
この歌題を見るに、旅先で出会う恋とは、刹那の恋であり、もう再び出会うことのない悲しい恋を連想させます。
文法的には、”澪標(みおつくし)”は、”難波”の縁語で、「身を尽くしてや」に掛かります、と説明されるものです。
しかし、そんなテクニックのすばらしさより、気になるのは、航路標識”澪標”の意味が示唆するものです。
澪標の意味は、「航行不可、進入禁止」。
旅先での刹那の恋なんて、身を捧げ尽くし、ひたすら恋焦がれるしかない、切なく悲しい恋でしかありません。
立ち入りは危険ですよ。
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