決まり字とは、歌を上の句の最初から読んでいき、その文字が読まれたら、その歌が、どの一首なのかが決まるところの文字をいいます。
具体的に例をあげて、説明します。
読み手が読み始めます。
最初の音が「あ」だとします。
その場合、「あ」から始まる歌は十六首あるので、そのうち、どの歌が歌われているのかは断定できません。
「あき」と歌われると、以下の二首のうちのどちらかだということが分かります。
あきのたの かりおのいおの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ(歌番号1 天智天皇)
あきかぜに たなびくくもの たえまより もれいづるつきの かげのさやけさ(歌番号79 左京大夫顕輔)
次の音が「の」であれば、「あきの」で天智天皇の歌、「か」であれば、「あきか」で左京大夫顕輔の歌だと断定できます。
決まり字まで、聞き終えれば、最後まで、歌を聞かなくても、正しい札を取りにいくことができるわけです。
この「あきの」や「あきか」を、決まり字といいます。
決まり字を覚えていれば、札に手を伸ばす最短のタイミングを知ることになりますので、かるたを早く取るうえで、有利です。
また、極端な話、上の句、下の句の決まり字さえ覚えていれば、かるた取りができるわけで、一首まるごと覚えるよりも、覚える量が少なくて済みます。
少々、味気ない話になりますが(笑)
決まり字には、その文字数によって「一字決まり」に始まって、「六字決まり」まであります。
一字決まりは、その文字で始まる歌が一首のみの歌をいいます。
「む」「す」「め」「ふ」「さ」「ほ」「せ」の文字で始まる七首です。
- 村雨の 露もまだ干ぬ 槇の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ
- 住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ
- めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かな
- 吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ
- さびしさに 宿を立ち出でて 眺むれば いづこも同じ 秋の夕暮れ
- ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有り明けの 月ぞ残れる
- 瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ
一字を覚えるだけで、取りにいけるのですから、暗記も楽でお得な札といえます。
逆に六字決まり=決まり字が六文字のものなどは、覚える量も多く、それだけ同じ文字を共有する歌が多いので、負担が大きいと感じられると思います。
しかし、決まり字は競技が進むに従って、その文字数が変化していくのです。
先ほどの決まり字「あきの」は三字決まりですが、すでに「秋風に」が読まれていたならば、どうでしょう。
「あき」の二文字で取りにいくことできます。
また他の「あ」の文字が出てしまえば、最後には一字決まりになるのです。
このことから、競技の最中も常に決まり字に注意を置いて対戦することが大切だといえます。
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