大納言経信
だいなごんつねのぶ
夕されば 門田の稲葉 おとづれて 芦のまろやに 秋風ぞ吹く
ゆうされば かどたのいなば おとずれて あしのまろやに あきかぜぞふく
意訳 |
夕方になると、家の門の前の田んぼの稲穂に、秋風が訪れ、また芦葺きの小屋にも、風が吹いています。 |
歌の種類 |
秋『金葉集 秋173』 |
決まり字 |
ゆうされば かどたのいなば おとずれて あしのまろやに あきかぜぞふく |
語呂合わせ |
言う足(いう あし) |
人物
大納言経信(1016年-1097年2月20日)
源俊頼朝臣の父。
公家・歌人・漢詩文に長じ・音楽家
和歌六人党の一人
二人目の三船の才(さんせんのさい)
師賢朝臣の梅津に人々まかりて、田家の秋風といへることをよめる
『金葉集 詞書』
源師賢の梅津(現在の京都市右京区梅津)の山荘を人々が訪ねて、田や家、秋風といったことを詠んだ。
と、あります。
田や家などを美しく絵画的に描き、臨場感のある歌となっています。
経信は人物の項にも書きましたが、非常な才能の持ち主でした。
1076年、白河天皇が覆井川に行幸されたとき、詩、歌、管弦の3つの船を浮かべて、それぞれの道の名人と言われる人を乗せて楽しまれました。
経信も招かれていましたが、遅刻して参上しました。
船は岸をすでに離れていました。
経信は、汀にひざまずいて、「どの船でもよろしいので、お寄せください」と言いました。
『詩』『歌』『管弦』。どの船にでも乗るに値する才能を持っている自信がないと、言えないセリフです。
・・・『古今著聞集』は、このセリフが言いたいがためにわざと遅参したと、酷評していますが。
経信、御年61歳。
もしも故意の遅参とだとすれば、なかなかしたたかなご老人と言えます。
藤原公任に次ぐ二人目の三船の才です。
読み上げ
070 良暹法師 さびしさに | 072 祐子内親王家紀伊 音に聞く |