俊恵法師
しゅんえほうし
夜もすがら 物思ふ頃は 明けやらで 閏のひまさへ つれなかりけり
よもすがら ものおもうころは あけやらで ねやのひまさえ つれなかりけり
意訳 |
一晩中、会いに来ないあなたを待ちつつ悩んでいると、なかなか夜が明けないの。寝室の戸の隙間さえも、いつまでも暗いまま。冷たいのね。 |
歌の種類 |
恋 『千載集 恋歌二766』 |
決まり字 |
よもすがら ものおもうころは あけやらで ねやのひまさえ つれなかりけり |
語呂合わせ |
用もねぇや(ようも ねぇや) |
人物
俊恵法師(1113年-1191年?) 父は源俊頼。 祖父は源経信。 僧・歌人。 白川の自坊「歌林苑」に多くの歌人を集めて、歌合や月次歌会を行った。 藤原清輔・源頼政・殷富門院大輔など。
女の情熱的な恋の歌 を詠うお坊さん
一晩中待っていることから、この歌の主人公は女性であることがわかります。
平安時代の女性は相手の男の家に乗り込みに行ったりしませんから。
男が通ってくるのを待つだけです。
現代の歌謡曲などでも、男性アーティストが作詞した女性目線の曲があります
男の人は、女性にこういった恋愛を求めているのかな、と想像させられて面白いと思います
しかしこの歌のように、男性のみならずお坊さんが詠む女性目線の恋愛歌というのはどうでしょうか
俊恵法師の絵札のお姿を拝見しながら考えこんでしまいました
百人一首の中には同じように、お坊さんが女性の恋の歌を詠った歌がもう一首あります。
歌番号21 素性法師の歌です
今来むと いひしばかりに 長月の 有り明けの月を 待ち出でつるかな
(すぐに会いに行くよと、あなたが言ったから、毎晩待っていたの。夜の長い九月、有明の月が見える朝まで、待っていたのよ。)
こちらもつれない男を待つ女の恋愛歌です
読み上げ
084 藤原清輔朝臣 ながらへば | 086 西行法師 嘆けとて |