紫式部
むらさきしきぶ
めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かな
めぐりあいて みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よわのつきかな
意訳 |
久しぶりにあなたに会えたと思ったら、もういない。まるで、雲に隠れた月のようね。 |
歌の種類 |
雑 『新古今和歌集 雑歌上1499』 |
決まり字 |
めぐりあいて みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よわのつきかな |
語呂合わせ |
メグ、雲隠れ(メグ くもがくれ) |
人物
紫式部(970年?-1014年?)
曽祖父は三条右大臣と中納言兼輔。
娘は大弐三位。
一条天皇の中宮・藤原彰子に仕える。
『源氏物語』の作者。
中古三十六歌仙の一人。
女房三十六歌仙の一人。
恋の歌ではありません。
つかの間の逢瀬、別れの予感から、この歌を恋の歌だと思う人も多いと思います。
早くよりわらは友だちに侍りける人の、年ごろ経てゆきあひたる、ほのかにて、七月十日のころ、月にきおいて帰り侍りければ
『古今和歌集』詞書より
(ずっと以前から、幼友達だった人が、久しぶりに行き合いました。
7月10日の半月と競うかのように帰ってしまい、つかの間の出会いでした。)
詞書にあるように、紫式部の女性の幼友達が相手です。
その人遠き所にいくなりけり。秋の果つる日来たるあかつき、虫の声あはれなり。
鳴き弱るまがきの虫もとめがたき 秋の別れや悲しかるらむ『紫式部集』より
(その人は遠い所に行くのでした。
秋の終わり9月最後の日に来たその明け方、虫の声が哀しく聞こえました。
冬が近づき、鳴く声も弱ってきた籠の虫も、引き止めることはできません。
秋の別れはとても悲しい。)
”童友達”という言葉をこの歌を通じて知りました。
幼馴染や幼友達の”幼い”は、出会い始めの時期を表す言葉で、その関係が今も続いている相手のことです。
しかし、”童友達”の”童”は、幼い子、という意味です。
子供の時だけ友達でいて、この歌の通り、その後別れて会えなくなってしまった、意味合いに取れて、切なく感じました。
読み上げ
056 和泉式部 あらざらむ | 058 大弐三位 有馬山 |