殷富門院大輔
いんぷもんいんのたいふ
見せばやな 雄島の海人の 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色は変はらず
みせばやな おじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかわらず
意訳 |
見せたいわ。雄島の海人の袖ほどにも、涙でぬれたわたしの袖。血の涙で、色まで変わってしまった。海人の袖は、どんなに潮で濡れても、色までは変わらないわね。 |
歌の種類 |
恋 『千載集 恋歌四886』 |
決まり字 |
みせばやな おじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかわらず |
語呂合わせ |
見せぬ(みせ ぬ) |
人物
殷富門院大輔(1131年?-1200年?)
後白河院皇女殷富門院に仕える。
藤原定家・寂蓮・西行・源頼政など多くの歌人と交際があった。
俊恵主催の歌林苑(宮廷歌人の集まり)のメンバー。
また、1187年の百首歌(藤原定家・家隆・寂蓮等が参加)等を主催。
あま
『北斎漫画』より
現在「あまさん」、「あまちゃん」というと、海に潜って貝類や海藻を採集する漁を職業とする人、特に女性をさすと思います。
しかし、古くは男女を問わず、漁師全般を指していました。
「海人」は、「海士」「海女」とも書かれます。
この歌では、意味的に「海女」という漢字ですね。
いつも潮に濡れている海女の袖ですら、冷たいあなたを恨むわたしの血涙に濡れた袖ほどは、色は変わっていないはず。
読み上げ
089 式子内親王 玉の緒よ | 091 後京極摂政前太政大臣 きりぎりす |