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002 持統天皇 春過ぎて

持統天皇持統天皇
じとうてんのう

春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山
はるすぎて なつきにけらし しろたえの ころもほすちょう あまのかぐやま

意訳
春が過ぎ、夏が来たようです。夏のお祭りのための真っ白な着物が、天の香具山に干してあると、聞きました
歌の種類
夏 『新古今和歌集 夏175』
決まり字
はるすぎて なつきにけらし しろたえの
ころもほすちょう あまのかぐやま
語呂合わせ
 春過ぎ、衣干す(はるすぎ ころもほす)

人物

持統天皇(645年-703年)第41代天皇
天智天皇の太子・大友皇子(おおとものおうじ)と、壬申の乱で夫である大海人皇子(おおあまのおうじ 後の天武天皇)と共に戦い、勝利する
夫の死後、息子の草壁皇子(くさかべのおうじ)ライバル大津皇子(おおつのみこ 持統天皇の姉の息子 つまり甥)を謀反の疑いで処刑
しかし皇子が病気で早世したため、孫の軽皇子(かるのおうじ 当時7歳 後の文武天皇)が即位するまでの間、自身が天皇として統治する
歌番号1の天智天皇の娘

三角関係で悩む 天の香具山の恋愛事情

天の香具山は畝傍山(うねびやま)が愛おしく、妻にしようとしていました
ところが、耳成山(みみなしやま)も畝傍山を妻にしようとしていたので、両者(両山?)は争いました
という神話があります

大和三山

きれいな二等辺三角形を描いて、畝傍山を頂点に、天の香具山と耳成山が位置しています
山だけに三角関係というわけですね(笑)

この歌が藤原京時代のものであれば、持統天皇は天の香具山から1Kmほどの場所にいたことになります

香具山は 畝火(うねび)ををしと 耳成(みみなし)と 相あらそひき 神代より かくにあるらし 古昔(いにしへ)も 然(しか)にあれこそ うつせみも 嬬(つま)をあらそふらしき  (『万葉集』より)

この歌は、中大兄皇子(天智天皇)のものです
最後にこう続きます

神代でさえそうなのだから、今の時代、妻をめぐって人々が争うのも無理がないね

しれっとこう嘯いた中大兄皇子(のちの天智天皇)は、大海人皇子の妻、額田王(ぬかたのおおきみ)を奪い、同時に、自分の娘二人を大海人皇子に嫁がせます
この娘たちの一人が、大津皇子の母大田皇女(おおたのひめみこ)
もう一人が、後の持統天皇である鵜野讃良皇女(うののささら 後の持統天皇)です

原歌アレンジ

『万葉集』にある原歌では、次のようになっています

春すぎて 夏来るらし 白妙の 衣ほしたり 天の香具山

万葉集のものが、目の前の実景をを表しているのに対し、伝承の意味合いが深まって共感を呼ぶものとなった感じがします。

白い衣とは何でしょう

諸説あります。

  • 夏の神事にかかわる乙女たちの斎衣または小忌衣
  • 天の香具山の甘檮明神は人の嘘を見抜くのに、白い衣を水に浸していたという。その伝説の衣
  • 初夏、咲き乱れる卯の花
  • 初夏にたなびく霞

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