待賢門院堀河
たいけんもんいんのほりかわ
長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れてけさは 物をこそ思へ
ながからん こころもしらず くろかみの みだれてけさは ものをこそおもえ
意訳 |
末永くあなたの気持ちがわたしのものなのか?と、心が乱れます。今朝帰るあなたを見送って、乱れた髪のまま、そんな思いにふける。 |
歌の種類 |
秋 『千載集 恋歌三802』 |
決まり字 |
ながからん こころもしらず くろかみの みだれてけさは ものをこそおもえ |
語呂合わせ |
長から、乱れて(ながから みだれて) |
人物
待賢門院堀河(生没年未詳)
崇徳院の母、待賢門院に仕えたため、この呼び名がついた。
崇徳院の久安百首のための題詠
百首歌たてまつりける時、恋の心をよめる
『千載集詞書』より
乱れた黒髪。
物思いに耽る朝。
数多ある百人一首の恋歌のうち最も官能的な美しさを誇るこの歌ですが、『久安百首』での題詠です。
具体的な相手は不在、もしくは不明です。
読む人の心を動かす歌だけに、相手のいない架空の恋の歌と聞くと、残念な気持ちになります。
しかし、恋人たちの間で秘めやかに交わされる恋の歌が、公になることはほとんどありません。
この歌が残ったのは、崇徳院という一国の頂点にある人の歌の催しで発表された賜物なのです。
彼女にこんな朝を過ごすような恋が本当にあった、と想像するだけで満足することにします。
読み上げ
079 左京大夫顕輔 秋風に | 081 後徳大寺左大臣 ほととぎす |