恵慶法師
えぎょうほうし
八重葎 茂れる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり
やえむぐら しげれるやどの さびしきに ひとこそみえね あきはきにけり
意訳 |
つる草が生え茂る屋敷はとても淋しい。ここを訪ね来る人は誰もいないのに、秋だけは来るのだなぁ。 |
歌の種類 |
秋 『拾遺集 秋140』 |
決まり字 |
やえむぐら しげれるやどの さびしきに ひとこそみえね あきはきにけり |
語呂合わせ |
八重で人こそ見えねぇ(やえで ひとこそみえねぇ) |
人物
恵慶法師(生没年未詳)
中古三十六歌仙の一人
河原院
この歌の『拾遺集』の詞書にこうあります。
河原院にて、荒れたる宿に秋来るという心を人々よみ侍るに
この河原院とは、源融の旧邸宅のことです。
12000坪の敷地面積を誇る、贅を尽くしたものでした。
日本一美しい風景は、陸奥の松島湾の塩竈の浦だということで、それを模します。
庭にその風景を展開し、池にはいろいろの魚貝を放ちました。
また毎日、尼崎の浦から人夫数百人で海水を3600Lを運ばせて、塩竈を立てて塩を焼かせたといいます。
融の死後、息子の昇が宇多院に献じましたが、華美を維持することはできず、荒れ果ててしまいました。
この歌の当時には寺となり、融の曾孫の安法法師が住んでいました。
恵慶法師の友人でしたので、しばしば和歌の詠作を楽しんでいたようです。
読み上げ
046 曾禰好忠 由良の門を | 048 源重之 風をいたみ |