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062 清少納言 夜をこめて

清少納言清少納言
せいしょうなごん

夜をこめて 鳥の空音は はかるとも よに逢坂の 関は許さじ
よをこめて とりのそらねは はかるとも よにおうさかの せきはゆるさじ

意訳
夜明け前なのに函谷関は鶏の鳴き真似に、夜明けだと、だまされました。が、ここ逢坂の関は、そんなことではだまされませんよ。
歌の種類
雑 『後拾遺集 雑二939』
決まり字
よをこめて とりのそらねは はかるとも
よにおうさかの せきはゆるさじ
語呂合わせ
 よをよに(よを よに)

人物

清少納言(966年?-1025年)
祖父は清原深養父
父は清原元輔
中古三十六歌仙の一人。
女房三十六歌仙の一人。
『枕草子』の作者。
藤原実方、藤原斉信、藤原行成、源宣方、源経房との親交があった。

函谷関(かんこくかん)

中国河南省北西部の交通の要衝。
秦を逃れた斉の孟嘗君が鶏鳴を巧みに真似る食客の働きで関門を開けさせ、通過したという古事によって著名。

恋の歌ではありません

権大納言行成、物語などし侍りけるに、内の御物忌みに籠もればとて、急ぎ帰りて、
つとめて、鶏の声にもよほされてと言ひをこせて侍りければ、
夜深かりける鶏の声は函谷関の事にやと、言ひつかはしたりけるを、
たちかへり、これは逢坂の関に侍る、とあれば、詠み侍りける

『後拾遺集』詞書より

『御拾遺和歌集』の「恋歌」の部門ではなく、「雑歌」に入っています。
友人同士の戯言だからです。

藤原行成との一幕です。
夜半、行成と清少納言が話をしています。
「明日の帝の御物忌みに籠もらなければ」と帰ります。
明け方に「鶏の声に急かされてしまったな」などと書いた文がきます。
それを読んだ清少納言は「それは函谷関のうそ鳴きの古事でしょ」と返事すると
「函谷関じゃあないよ。僕らの仲と言えば、逢坂の関じゃないか」と返してきました。

—と、このセリフが冗談で、ここから恋人ごっこという展開になります。

清少納言の歌
函谷関の関守はだませても、逢坂の関守はだまされませんよ。

長い前置きでしたが、この歌は恋愛風ではありますが、雑歌という扱いなのです。

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