参議雅経
さんぎまさつね
み吉野の 山の秋風 さ夜更けて ふるさと寒く 衣打つなり
みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり
意訳 |
吉野山に秋風が、吹き、夜も更けました。古い都があったこの里は、寒く、衣を打つ音が、響いています |
歌の種類 |
秋 『新古今集 秋歌下483』 |
決まり字 |
みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり |
語呂合わせ |
見よ、ふるさと(みよ ふるさと) |
人物
参議雅経(1170年-1221年4月5日)
藤原雅経。または飛鳥井雅経(あすかい まさつね)
平安時代末期から鎌倉時代前期の公家・歌人。
和歌・蹴鞠の師範を家業とする飛鳥井家の祖。
蹴鞠関係の著に『蹴鞠略記』がる。
後鳥羽上皇に近侍し藤原定家などとともに『新古今和歌集』を撰進。
衣をうつ気持ち?
なぜ、衣を打つのでしょうか。
アイロンのない時代、木や石の台に水で濡らした衣を載せて、木槌で叩いて衣を柔らかくしたり、布の織り目を揃えて艶を出したりしました。
乾燥を防ぐためもあって、この作業は夜行われることが多かったようです。
この歌の『新古今集』の詞書には、「擣衣(とうい)のこころを」とあります。
衣を打つという気持ちを詠みました、という意味ですが、衣を打つ気持ちとは何でしょうか。
これは、唐の詩人李白の『子夜呉歌(しやごか)』という有名な詩の情景を背景としています。
『子夜呉歌(しやごか)』
唐の都長安の夜に浮かぶひとひらの月。
どの家からも衣を擣つ音が。
秋風は吹き止むことはなく。
そんなこんなすべてが、玉門関の戦に徴兵された夫を想う気持ちをかきたてる。
いつになれば、敵が平定され、あのひとが遠征を罷免されてわたしのもとへ帰ってくるのか。
秋の夜更けに響く風と木槌の音が、夫を待つ女性の寂しさを表現している詩です。
雅経は「擣衣のこころを」と言われ、『子夜呉歌』の情景を背景に和歌を詠んだものと思います。
読み上げ
093 鎌倉右大臣 世の中は | 095 前大僧正慈円 おほけなく |